俺様主人は時に甘い


「少し落ち着いたみたいね」



保健の先生は、ホットココアを私に手渡すと椅子に座って珈琲を啜った。



「何があったのか話してくれるかな?」



話す……あのことを?


目を瞑って思い出す。



私の下駄箱の中。


上靴には大量の画鋲が刺さり、中には無数のカッターの刃。


そして、【死】と血で大きく書かれた紙。



「……っ、は、はぁはぁはぁ……っ」



思い出すと、呼吸が苦しくなる。


身体が震え、冷えていく。



「落合さん⁉︎大丈夫⁉︎」


「はぁはぁ……っ、ごめんなさ……」


「ゆっくり息吸って。大丈夫。先生がいるわ」



先生は背中をゆっくりと摩ってくれるけど、苦しくて苦しくて意識が途絶えてしまいそうになった。



その時。



「ミヤっ‼︎」



ガラッと勢いよくドアが開くと、先輩が慌ただしく入ってきた。


椅子に座って過呼吸を起こしかけてる私の目の前にしゃがむと、私を抱き寄せた。



「大丈夫。俺がついてる」



そう言って、優しく頭を撫でてくれる。