「ど、どうしたの?急に」



頬杖をついて、私を穏やかな瞳で見つめてくる鈴菜。


私は何だか照れ臭くて、未開封のパックジュースにストローを刺してズズズッと一気に吸った。



「天然で鈍臭いけど、しっかり自分の考えがあって。チビなのに逞しい」


「もう!天然とかチビとか余計だって」



鈴菜の言葉が胸にじんわりと染み込む。



一ヶ月前、入学式の翌日から二日間。


熱で学校を休んで、友達作りに出遅れた私に最初に声を掛けてくれた鈴菜。


まだ友達になって一ヶ月しか経ってないけど、鈴菜と友達になれて良かったって心の底から思ってる。





「それにしても、本当に笠原先輩のこと知らないの?」


「うん。そんなに有名な人なの?」



まだクラスや勉強、高校生活に慣れるのにいっぱいいっぱいで、上級生のことにまで頭が回らない。


それに、私の中は他の男子が入らないぐらい先生で溢れてるから。



鈴菜は「雅らしいね」と言うと、突然「あっ!」と声を上げた。