お互いの吐息が触れ合う程の距離。 あと、数ミリで唇が重なりそうになった瞬間。 私は…… 「ダメ、です」 桜庭さんの肩に手を当てて、グッと押し退けた。 そして「ごめんなさい」と告げ、車を降りる。 桜庭さんがどんな顔をしていたかはわからない。 見る勇気がなかったから。 ドアを閉めて、トランクから荷物を取って。 私は再度「ありがとうございました」と、頭を下げてから 逃げるように家の中に入った───‥