溺愛オフィス



「どうにか説得できないかなぁ……」


ビルの隙間から見える黄昏時の空を見ながら声にすれば。


「……なんでそんな頑張るの?」


隣を歩く壮介君に問われる。


「なんでって」

「もしかしてさ、桜庭さんの為とか?」


その質問と、出てきた人の名前に私は即座に返事することができなかった。

だけど、誤魔化してはいけない空気を感じて。


「それも……ある」


素直に、答えた。

すると、壮介君が長い息を吐き出す。


「……自分で振っといてなんだけど、ちょっと聞きたくなかったかも」


彼の視線は、私でも街並みでもなく、足元へと落ちていて。

その横顔は少しだけ寂しそうで。


「ごめん……でも、それだけじゃないよ。会社とか、自分の為でもあるの」


私は謝りつつも、言葉を重ねた。