溺愛オフィス



「お、おは、おはようございます」

「……何テンパッてんだ」


私の前で立ち止まった桜庭さん。

視線を合わせることが出来ず、思わず俯いてしまうと。


「体調は?」


特に普段と変わらない口調で聞かれた。


「はいっ……頭痛がありましたけど、薬でなんとか……」

「自業自得だな。まあ、もう無茶はするなよ」

「はい。あの、昨日は──」


感謝と謝罪。

その両方を伝えようとしたら。


「待っててやるから」


私の言葉を遮り、柔らかく微笑んだ桜庭さん。


待つ……って?


何のことかわからずに首を傾げても、彼はただ微笑みを残し、背を向けてオフィスへと入っていった。