溺愛オフィス



「いいよ。今時間あるし、ちょっとくらいなら暇つぶしになるから」


そう言うと、KAORIさんは松岡さんの隣の席に座り、デニムのショートパンツから伸びるスラリとした長い足を組んだ。

私は立ったまま、再びKAORIさんに向かって深く頭を下げる。


「先日は、私が至らないばかりに失礼しました」

「……それで?」


聞こえてきたのはそっけない声。

私はその態勢のまま、KAORIさんにもう一度考え直してもらいたい、新ブランドにはKAORIさんが必要なのだと、弊社の社長も心からそれを願っていると伝えた。

撮影時、私が不要なら立ち合わない、KAORIさんが仕事のしやすいよう、出来る限りのことはする、とも。


私は頭を下げ続け、KAORIさんの言葉を待つ。

暫くして「出来る限り、ねえ」という声が聞こえたかと思えば。


「だったら、とりあえず今すぐギャレットのポップコーン買って来て」


何だか場違いな気のする単語に、私は思わず頭を上げてしまう。


「え?」


ギャレットのポップコーンて、あの、行列の出来るポップコーンのこと、だよね?