──結局、松岡さんの説得も徒労に終わったようで、KAORIさんはスタジオに戻ってくることはなかった。
当然、撮影は中止になって。
「どうするんですか」
壮介君の問いかけに、メイクスペースでアクセサリを片付けていた桜庭さんが顔を上げた。
「社長には連絡した。説明は俺がする」
それだけ言うと、桜庭さんはアクセサリの入った箱を深水さんに手渡す。
「3人はこのまま直帰で。今後の事は、また改めて会社で話す」
お疲れ。
挨拶を残し、後ろ手を振って。
桜庭さんはメイクスペースから出て行ってしまった。
壮介君は小さく溜め息を吐き出してから、引き続き衣装を片付ける。
深水さんも心配そうに眉に皺を作りながら、桜庭さんから受け取った箱を持って1階へ降りていった。



