溺愛オフィス



桜庭さんのお家にお邪魔した時も、シャワーと替えの服を借りた時も、コーヒーを差し出された時も、口にした感謝の言葉。

でも、今のはきっと、桜庭さんにとっては脈絡もないもの。

だから、怪訝そうな顔をするだろうと思ったのに。


私でさえ、何をどう伝えたくて声に出したのかわかってないのに。


「どういたしまして」


口元を優しく歪めて返すから。


急速に景色が滲んで。


零れ落ちそうになるソレを隠すように、私は俯いたのだった。