数段の階段の先にあるのは、モダンにデザインされたブラウンの自動扉。

桜庭さんは迷うことなく階段を昇って行く。

私は傘をたたみ、桜庭さんの背を追って階段に足を掛けた。


「桜庭さん、ここって……」


もしかして、とは思いつつも問い掛ける。

すると、桜庭さんは自動扉の前で私を振り返り。


「俺の住んでるマンションだよ」


そう言うと、扉の中へと進んで行った──‥