溺愛オフィス



「利用?」


一体、過去に二人の間で何があったのか。

詳しいところは話してはもらえないかとも思ったけど、お酒が入っているからか。

桜庭さんは、冷えて汗をかいているグラスを見つめながら、唇を開く。


「高校の時……あいつは、俺の親がファッション業界で活躍しているのを知って、俺に近付いたんだよ」


そういえば、聞いた事がある。

桜庭さんと社長のご両親は、ファッション業界でも有名な人なんだと。


「もしかして、モデルになる為に桜庭さんと……?」


予想は的中。

桜庭さんは小さく頷いた。


「で、でも、いくらなんでも気持ちはあったはずですよ。じゃなきゃ、好きでもないのに付き合うなんて──」

「当時のあいつの気持ちなんて今更どうでもいい。ただ確かなのは、コネができてモデルになれた途端、俺と別れたことだ。しかも、芸能関係者の男を作ってな」


そこまで話すと、桜庭さんはウイスキーを飲み干しグラスを空にする。