「特に変わった事はないんです。でも何ていうか…何もかも疲れる時ってありません?もう全部投げ出したいっていうか。今そんな感じで」


寝て起きて仕事をして、時々飲みに行ったり遊びに行ったり。楽しみがないわけじゃないけど、人付き合いが苦手な私は時々無性に自分一人だけになりたくなって、でもそういうわけにいかないから疲れて、全部投げ出したくなって。


「今日飲みに行くか」


加藤さんはパンをかじりながらそう言った。何でもないようにサラリと。


「ありがたいけど遠慮します。加藤さんモテるからやっかまれそうだし」


実際、社内には加藤さんに本気でアタックする人、目の保養と言っては熱視線を送る人、色んな人がいる。取引先の人にも人気があるなんて話を聞いたこともあるし。


「女同士って面倒だよな。やっかむ奴なんてろくでもない。俺には文句なんて言ってこないくせに、裏ではターゲットに集中攻撃する。そんな奴誰も選ばねーよ」

「…それでもグループとか派閥とか、そういうのに属してた方が面倒でも安心なんじゃないですか。ハブられると余計に面倒ですから。女同士は」