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俺がキッチンで作業している間、七未はテレビを見ながらあーだこーだと俺に話しかけていて、適当に相槌を打っていた。
けれどいつの間にかその声もしなくなって目をやると、ソファで丸くなって眠っている。
手を止めてキッチンから出ると、そっとブランケットをかけた。
顔の近くでしゃがんで、七未の寝顔を見る。
見慣れた顔なのに、どうしてこんなに可愛いんだろう。
七未が起きないことを願って、頭のてっぺんにそっとキスをした。
俺は何度こうして、言えないキスをしてきたのか…。
今この瞬間に七未が起きたら、どんな反応をするだろう。
気づいてほしい思いと、気づいてほしくない思い。
俺は臆病なんだ。昔からずっと。

