今年だって、本命チョコをもらわなかったわけじゃない。
その場で、受け取れないとハッキリ断っただけ―――。
俺が欲しいチョコレートはいつだってただ一つ。それが本命じゃなくたって、七未がくれるものだから欲しいんだ。
「じゃあ、これは本命の子へのお返しか。…付き合ってるの?」
「いや」
「渡して返事コースってわけ?明日も休みだしねー。デートにはうってつけじゃん。シゲ、ヤッちゃうんでしょ」
俺は包丁を置くと七未の頭を思い切りこずいた。七未は頭を押さえて痛い痛いと喚いている。
腰まである髪の毛はゆるふわとかいうパーマがかけられていて、触ったら気持ちよさそうだ。
「ヤッちゃうとか言うな」
「本気でやることないでしょ。シゲ、男なんだから加減してよ」
「へー。七未って女だったのか」
七未は俺のお尻に蹴りを入れた。
好きな女相手に加減なんてしてられるか。加減なんてしたら、唯一触れるところまで触れなくなってしまう。

