一応いつか立原と行こうと思って下調べしていたのが功を奏し、路地だったが、特に迷うことなく店に着いた。

「うわ、いいねここ。好き」

立原が好きそうだなと思っていたが、この何カ月かで、幾分か好みを把握できていたようだ。そして、その「好き」を俺に向けてくれないかな、なんて思いながら、静かにBGMの鳴る店内を見回して席を取った。

「悠くん、いつ見つけたの。知らなかったなあ、こんなとこにお店あるなんて」
「たまたま、歩いてて見つけたんです。良かった、涼子が好きそうだと思ったから一緒に来たかったんだよね」

中々恋人感が出てきていい雰囲気だ。

「学校どう?」
「今は文化祭の準備ばかりかな。俺クラス委員だから、色々言われるんだけど…、正直面倒くさくて」
「分かる。あたしもそういう行事事嫌いだったなあ、でも懐かしい。悠くんは何するの?」
「クラスは喫茶店をすることに決まって、部活の方は焼きそば作るみたい。でも部活の方は2年生中心だからあんまりする事ないんだけど」

行事事が嫌いな立原でも、現役の話しを聞いてると懐かしい気分になった。

文化祭といえば、な6年前の「告白大会」を立原は思い出しふっと笑みが零れる。
中等部•高等部•大学が唯一交流できる場が、文化祭だった。