「そっちがいい。悠くんに呼ばれるなら。それに初デートだし、ね?」

まともに立原が見れない。恥ずかしさと嬉しさと色々混ざって。少なくとも、立原と浅岡は付き合っているという事であっているだろうか。

「俺たち、付き合ってるんですよね?」
「じゃなきゃ、デートなんてしない」
「涼子っ、俺のこと本当に好き…?」
「あたしがドライな事知ってるでしょ?デート受けてるんだから…、そうだって分かるんじゃないの」
「分からない。ちゃんと聴きたい。俺ばかり言ってるから」

嬉しさが現実を帯びてきて、少し突っ込んで見たくなった。怖いもの見たさというのか。しかし確かに、浅岡はしょっちゅう立原に好きということを伝えるが、立原からは明確に好きと言われたことがない。

「なんで、言わなきゃなんないの」
「言わないと分からないから。俺は涼子が好きだよ。ーーー涼子は?」

いつもの立原とやはり違う。耳まで真っ赤にして俯いている。いつもは余裕そうなのに、追い込まれているように見えた。

「ここじゃ、言いたくない」
「じゃあ、カフェでも入ろう?」

なんだか、勝った気分だ。上手を取ったようで、初めての感覚である。しかしより立原が綺麗に、魅力的に見えるだけで、心臓の音が聞こえてきそうだ。
カフェまで、指先をつないで歩く。ドアのベルが鳴ると同時くらいに浅岡は立原に袖を引っ張られた。

「あたしも、好き。悠くんのこと」

耳元で囁かれまさに胸が高鳴った。