全く急ぐ様子もなく、立原はガキと待ち合わせの1階ロビーに向かった。少しは懐かしく思う制服姿の数人がそわそわしているのが見える。
自分の表情が無であることを確認すると、スーツをはたきながら高校生に近づいた。

「お待たせ致しました。今日案内させていただきます、政治部の立原と申します」

無のまま頭を下げると、立原に一番近い高校生が「あれっ」と声を上げる。

「父さんじゃなかったんだ」

どうやら、上司の息子のようだ。

「申し訳ありません。只今部長は緊急の会議が入りまして、急遽わたくしが案内することになりました」

何かご不満でも?と思ったが、無を保つ。しかし、