9歳差は、アリですか？

悪いと思いながらも、中々帰れず気付けば8時だった。
もしかしたら、と思いパソコンを荒く閉じて立原は勢いよく駆け出す。少し高めのヒールが邪魔で走りにくい。悠くん、ごめん、やっぱ待ってて欲しい。

「ああもう！」

電車を降りるとパンプスを脱ぎ、ストッキングで走り出す。足はそこそこ速かったが、久しぶりの全力疾走で息が上がり苦しい。
オートロックの番号を押すのももどかしく、自動ドアが開きかけたところを待てずに体をねじ込む、急ぎっぷりだ。

「悠くんっ！」

玄関のドアノブを勢いで引いた。

ーーーガタン！

しかし、ドアには鍵がかかっており開かなかった。
間に合わなかったか…。思った以上ショックだったようで、立原は玄関の前でへたり込んだ。そして約束のドアの下にあるポケットの中に手を突っ込む。ここの内側に鍵は入れる約束なのだ。

しかし、

「嘘無い…。」

いくら漁っても鍵は無い。やばい。浅岡が恐らくここに入れるのを忘れてしまったのだろう。と言っても家に入れない為だいぶピンチだ。