昼休み、立原は携帯を確認するとメールが一件入っていた。なんとなく誰にも見られないように内側に傾けてからメールを開く。


差出人:浅岡悠

本文:今日寄ってもいいですか?口実は勉強だけど、メーンとして今日は俺がご飯作ります。お腹開けててくださいね。



可愛すぎる。と顔が緩むのをこらえながら返信する。


宛先:浅岡悠

本文:今日は6時くらいに帰ります。先入ってて大丈夫だよ。鍵はいつものところに置いてます。気をつけて来てね。ご飯楽しみにしてるね。
涼子


一応付き合って1カ月くらいは立つはずだ。しかし、未成年しかも高校生が「彼氏」だと気が引けて、公には中々口にできないので、あくまで家庭教師というスタンスを取っている。

「涼子ー!やっと見つけた」

立原を探しているという、不穏な噂を聞いていたので、わざわざ社内でも端の休憩室に来ていたのに、エンタメ関係の部署の合コン同僚は目敏く見つけてきた。やばい、とすかさず目をそらすがすぐに肩をがしっと掴まれる。

「涼子!今回は逃さないからね、合コン!」

遠慮なく立原は顔をしかめた。

「顔に『イ・ヤ』って書いてあるけど、今回こそは連れて行くわよ」
「あたしの拒否権はないのね」
「ある訳ないでしょ!あんた何回ブッチしたと思ってんの?」
「でもあたし、別に行く必要性ないし…」
「あんたに無くてもうちらにはあるの!あんたくらいの美人という見せ駒要員にすがんなきゃ、男ゲットできない女もいること忘れないでよね!」

中々悲しい台詞だが、今日は本当に無理だ。なんたって浅岡の初手料理なのだ、行ける訳がない。

「ごめん、本当に今日は無理。別当たって、あたし用事あるし」

彼氏の手料理を食べるという大事な用事である。

「ダメ!何言っても無駄よ。恋人とデートくらいの話じゃなきゃ強制連行するから」

彼氏と家デートなんですが…、言えない。