そうこうするうち、一週間が経ってしまった。こんなに会わなかったのは例の立原の名古屋出張以来である。
逃げてはいけないと分かっていながら、別れ話を切り出されたくなくてずっと浅岡を避けていた。偶然にも、ちょうど仕事が忙しくなり言い訳にも困らなかったのが幸いだ。

しかし、一週間が経った今立原は珍しく土曜日だというのに休みになっていた。言い訳がきかない。案の定、浅岡からメールが入っていた。


差出人:浅岡悠

本文:涼子、今日会える?家行っても大丈夫?話があったんだけど。悠


どう反応したらいいかわからない。立原は携帯を握り返信画面を睨んでいるだけで、すでに小一時間使っていた。電話も何度かかかってきたが、受け答えに困り、結局無視している。
どうしよう、そりゃあいつかは話さないといけないのは分かっている。それでも、立原はまだ浅岡の事が好きで別れたくないのだ。しかし、浅岡が別れたいと言えば、若いまだ未来のある子をアラサーが縛るつけておくわけにはいかないから、きっと別れなくてはいけない。

嫌だ。あたしはまだ悠くんのことが好きなの。別れるなんて無理。

ベットの上でまだ寝巻きのままで携帯を放り投げて倒れこんだ。どうしよう本当に会いたくない。どんな顔をすればいいのか分からないのだ。はあああ…、と深くため息をついた。

ちょうど、その時チャイムが鳴った。

びくりと肩が跳ねる。ーーーまさかね。
と冗談でもなさそうに思いつつ、モニターを見た。

なんで、と息を飲んだのは言うまでもない、モニターの先にいたのは紛れもなく浅岡だったからだ。