ーーあれ、あたし何考えてるの。

嘲笑が口の中で響く。当たり前な事なのに。なぜ自分ではなくあの女の子だったかというと、理由は一目瞭然だろう。まず年齢・可愛らしさ・甘え方・素直さ…。何に勝っているといるというのだ。
まず比べるとか、同じ土俵にいること自体がおかしい話である。

「ーーははっ」

乾いた笑い声が耳に聞こえた。もちろん、立原が自分に対して嘲笑う声だ。情けない。
しかし、そう思って思い込もうと思おうとしても、自分を笑いながらも涙は止まらなかった。浅岡の事が好きで好きで、もう浅岡なしではダメになっているのだ。
バカみたいに浮かれて、手に下げた買い物袋が嫌になる。ぐっと手を握り締めこの感情をやり過ごそうとした。

「涼子…?」

突然、名前を呼ばれて肩がびくりと揺れた。一瞬期待したことに激しく嫌悪感を自分に抱く。どう聞き間違っても男の人の声には聞こえないのに、というか先程逃げ出してきた同僚だった。なぜか息を切らしている。

「真佐美、」
「もう!この付近でちょっとした話題になってるよ。美人が泣いてるって。まさかと思ったら本当にあんただったとはねえ」

どうしてか分からないが、同僚の声が優しい。