9歳差は、アリですか？

片手で顔を覆っているといえど、結構な美人が唇を噛み締めながら涙を流し歩いている絵面は強烈で、すれ違う人々がギョッとしたように立原を見る。
その視線が痛いほど刺さって、嫌なはずなのだが、どうにも涙は収まらない。この際どうでもいいくらい、それくらい浅岡の事が好きなのだ。

いっそのこと今日外に出なければ良かった、そうすれば見なくて済んだのに。もう誰を責めたらいいのか分からない。しかし、がったがたに崩れた情緒は何かを責めなければ、それ以外どうしたらいいか、真面目に恋愛して来なかった立原には何もできない。

あたし、最低。

分かっていたはずだが、結局は自己嫌悪に陥る始末で、よくよく考えてみれば答えは簡単に分かるだろうに、面倒くさいと自分自身でも痛いほど理解できる。
浅岡と一緒に歩いていた女の子と立原には決定的な違いがあるから振られていたのに、

ーーーパンッ、と顔に水をかけられたようにそこまで思考が行くと、一気に冷静になった。