飲もうとしていたビールを眺め、もったいないと言い聞かせてグッと飲み干すとのそりと立ち上がる。スーツのシワを軽く直して怠い体を鞭打って家を出る。
悠くん今頃なにしてるんだろ、大学も真面目にやっていれば普通は大変だもんね。電車に揺られながら浅岡の事ばかりが立原の脳内を占めていて、思わず苦笑する。もういつの間にか立原は浅岡無しではダメな体質になっていたようだ。

「涼子!」

駅に着くなりホームで仁王立ちの同僚を見て、立原は回れ右をして電車に乗り直そうとした。その腕をすかさず捕まれ、強制的にズルズルと駅から引き出される。

「ちょっと、どうしたのよ突然」
「いい?今日は呑むから」
「なんの宣言よ。ていうか腕痛いから離して、ちゃんと歩けるから」

駅からだいぶ離れたところでようやく腕を掴んでいた手を離してもらえた。大人しくつかつかと歩く同僚の後ろをついて行くと、
いつも合コンで使用していた同僚御用達の居酒屋の前に着く。嫌な予感が背筋を伝い、顔が引き攣る。この店には合コンでしか来たことが無いような気がするのだが。

「あのお、真佐美…さん…?」

なんの迷いもなく入店した同僚をとっさに引き止めた。