鍵を差し込んで家に入るという行為はなんとロマンティックなのだろう。

と思いながら立原はいつもどうり暗証番号を押してドアーの前でカードキーを取り出して家に入った。先日まで一応鍵があったのにセキュリティ強化とか言ってカードキーになってしまった。益々現実感が増しロマンティックの欠片も無い。

「はああ…」

盛大にため息を吐き、リビングで買って来たばかりの酒類をビニールから出し無造作に床に座った。座卓な為、足がだらしなく伸びるが、ストッキング越しの足はなかなか艶めかしい。
いつもは浅岡がいるから、家飲みは控えるが、今日は来ないと知っているので呑むつもりだ。一本目はビールに限るなんて完全に女を捨てた様子でプシュッとプルタブを開けた。

嗚呼、快ッ感…。

と、口を付ける前に携帯がなった。浅岡だけ違う着信音にしているが、それではないので他の誰かだろう。いいところで邪魔するなあ、渋々の体でディスプレーを覗くと同僚からだった。