この勢いで調子に乗って浅岡はにやりと不敵に笑った。それに気づくはずない変に抜けてる立原は普通に微笑を返す。

「ねえ涼子」
「うん?」

浅岡に呼ばれ、立原がデザートを食べていた顔を上げる。それが罠とも知らず。

「ーーッ」
「隙あり!」

上げたと同時に唇に柔らかい触感がする。そしてほぼ同じタイミングでシャッター音も聞こえた。
つまり、ーーーキスされた。しかも写真を恐らく撮られたようだ。

「悠くん⁉︎」

唇が離れるとすぐに抗議の声をかける。

「あ、ごめん。ーーいやあ、俺そう言えば涼子とのツーショットないなと思いまして、」
「だからってこんなっ」
「どうせならラブラブなのが欲しくて…」
「言えば、…写真くらい撮る、のに」

しかし段々恥ずかしさの方が勝って来て、思わず俯いた。

「あ、涼子ごめっ、」
「違う。…ただ恥ずかしくて」

正直なところ、キスされて満更でもなかった。それが嫌だっただけだ。未成年にキスされて喜んでる27、もうすぐ28のアラサードライ女だなんて、浅岡が知ったらドン引きされるに決まっている。

「ごめん…」

謝ると浅岡は逆にもっと申し訳なさそうに立原を覗き込んだ。しかし、もう引かれているならそれはとっくの昔の話だろう。そう思うと開き直れそうだ。

「悠くん、ーーーあたしにもその写真、よかったら送って」
「えっ」
「ああ、そのっ。…あたしも悠くんとのツーショット欲しかったから。ごめん…」