「なんで、そんな事言うの…」

いよいよ本格的に涙がぼたぼたと流れる。酷い事言った立原に対して、浅岡はどうしてこうも、バカみたいに優しいのだろうか。

「悠くん、あたし、」
「知ってる。本気で言ったんじゃないんでしょ?俺がまだ子供だったから涼子は気を使ったんでしょ」

言葉を続ける前に、浅岡に抱きしめられた。耳元で囁かれて鼓動が速くなる。

「でも、俺もう子供じゃない。距離にだって、時間にだって負けないくらい涼子の事が好きなんだ。他の子なんて無理だ、涼子が好きなんだ。涼子別れる時言っただろ?まだ好きだった時はその時はまた付き合おうって。だから涼子、ーーー俺と付き合って下さい」

ああ、どうして今そんな事言うの。諦められなくなる。あたしだって悠くんのことずっと好きだったのに。

「悠くん、好き。好きなのあたし」

周りに人がいる事もどうでもよく、抱きしめられたまま、浅岡のジャケットに涙を濡らした。

「じゃあ、付き合おう?」
「ーーーうん」
「涼子」

名前を呼ばれ、抱きしめる力が弱まってやはり夢だったかと思った時、

今までで一番激しく甘く唇が重なった。

キスの合間に好きと呟く。ーーー夢ではなく、現実なのだ。素直になろう。甘く唇を離しながらその目に釘付けになる。