しかし一瞬浅岡を立原が見た気がして、慌てて目を逸らした。気付かれないように、速くなる心臓を意地で押し込める。
何せ6年もずっと他に目もくれず、立原が好きなのだ。ドキドキして緊張するのは当たり前だろう。浅岡は、立原も立原で浅岡のことが気になって仕方がない事には気付かず、一人どぎまぎしていた。

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案内も終わりに差し掛かった所で、立原の携帯がマナーモードで揺れた。高校生たちに一応断りを入れディスプレーを確認すると上司からだ。

「はい、立原です」
「あ、立原さんごめんね。今会議が5分休憩に入ったとこなんだけど、…どう、そっち?」
「あ、ガキですか?」

わざと、高校生たち特に浅岡に聞こえるよう声を出す。ガキと言われれば多少は傷ついて、諦めてくれるだろう。