一カ月はあっという間で、もう3月になっていた。立原は名古屋最後となっており、会議に本社に行くついでで東京に戻る事になる。

「3カ月でしたが、お世話になりました」
「おう!立原ちゃん美人だし仕事できるから寂しいなあ」
「出向だったらいつでもうちおいでよね。いっその事わざとヘマして名古屋に飛ばされておいで!」
「ああ、ドライの癒しがなくなるな。もうおばちゃんばっかに戻るのか…」

よく分からない見送りの言葉をいただいて、立原は再び笹山と新幹線に乗る。

「荷物少ないね」
「3カ月ですし、そんなに持ってきてなかったのでこんなもんですよ」

適当にやり取りしつつ席につく。今回も指定席で笹山と隣同士だ。しかし前回から、笹山の立原に対する対応が変わった。少し言い過ぎたのか、笹山発信の時はいつも通り調子いいが、立原から話しかけるとびくりと肩を強張らせる。笹山の方がよっぽど酷い事言っている気がするが、張本人は傷つくらしい。なんとも都合のいい心の体質だ。