上司に呼ばれ、席を立った。上司の顔からそこまで重要そうではないということがわかり、軽い気持ちで近づく。
某テレビ局の政治部に勤める立原涼子(たちはらりょうこ)は上着のしわを払いながら事務的に伺う。

「部長、どうされましたか」
「いやあ、あのね。大変恐縮ながら個人的なお願いがあってねえ」
「はあ…」

だんだんと申し訳なさそうに目を泳がす上司に立原は色々と考える。特に嫌いではないし、どちらかと言えば好感度の高い上司だ、申し訳なさそうな顔をする必要がないのだが。

「立原さんは子供嫌いだったよね?」
「ええまあ、大っ嫌いですね」
「そのお、どれくらいの子までは無理?」
「中学生以下は関わりたくないですね。高校生以上は特に拒否反応はありませんけど、…なんかコドモ関係のことなんですか?」

なるほど、上司が申し訳なさそうな顔をする訳が分かった。立原の一番嫌いな物は『コドモ』だからだ。