部員の子たちはもうアップを終えようとしていた。わたしがいた頃とはやっぱり少し雰囲気が変わってて、少し寂しく思っちゃった。陸上部員は今は1、2年生が中心だから。3年生は引退してるからね。

今日から一緒に戻るはずだった紗凪ちゃん初日からサボったし。
戻ってる3年生は…

アップをしながら周りを見回してみたけど、3年生は限りなく少なかった。2人くらいかな?でもあまり話したことないや。


気づくと、さっき来た時アップをしていた後輩達はもういなかった。


「アップ終わったし、わたしも走るか…」

ほんと久しぶり。ちゃんと走れるかな。
とりあえず、外周しようかな。(学校の周りのコンクリートの道をはしるんだ。)

タッ…


走り出すと、体はすぐに戻らなかったけどあの気持ちはすぐに蘇ってきた。

風が頬をなで、髪の毛を揺らす。自分の走る足音と吹奏楽部の演奏がリズムよく聞こえてくる。学校のグランドを囲うフェンスの奥でサッカー部と野球部が練習している。そして、太陽の暖かい日差しを浴びる。

それはそれはとても最高だった。
とても気持ちいい。

わたしはあらためて、走るのが好きだなって心から思い返すことができた。

きてよかった。

「よぉ!!イチじゃん!」

「え?」

振り返ると…

「あぁ!椎谷くん!」

後ろで走ってきたのは、椎谷南くんだった。陸上部の後輩だ。