〈そんなことがあったなんて……〉


千影は呆然としていた。


「全く、めんどくさかったよ。やたらあのバカ女たち近寄ってくるし、"はじめましてぇー篠崎さんと同じクラスの北野です~"とか言ってさ。ちょっと優しくしたらテンション上がってやんの」


初めて見る人のようだった。


そこにいる勇人は、勇人のようで勇人ではなかった。


少なくとも、千影が知る限りでは。


「で、さ」


勇人は千影にニッコリ笑いかけた。


「報酬をもらってもいいんじゃない?と俺は思うわけ」


〈報酬……?〉