夜ー闇に隠された瞳の奥ー




「いやぁ、ダサいな。どうしたんだお前。」

尚夏はそう言って私の頭をぐりぐりっと撫でた。

「ヅラ取れる。やめろ、尚夏。」


私は尚夏の手をはらった。

「一回顔見せろ。な?」

久しぶりなんだし、と尚夏は続けた。


確かに、尚夏と会うのは久しぶりだ。

私は頷き、カツラとカラコンを外した。

ハニーブラウンの髪が揺れる。


「綺麗だ。」


尚夏はそう言って私の髪を触ると、顔を覗き込んで目を見た。



パンパン!

成さんが手を叩いて口を開いた。

「さぁ、そろそろHRの時間だ。行け行け。」


「「はい」」

私と尚夏ははっとした。


私はすぐに、カツラとカラコンをつけ、完璧な"ダサい男子高校生"になった。



「じゃ、またな。何かあったらこいよ、みずな。」


成さんのその言葉と、優しい笑顔を見て、私と尚夏は理事長室をでた。