「あっち向いてて。」
「はいはい。」
葵は素直に私に背を向けた。
今度は無事携帯を取って、地面に降りることができた。
「自主練してたの?」
転がっているバスケットボールを見て葵にそう聞いた。
「まぁな。今日の俺、かっこよかった?」
よくそんなこと聞けるな…。
冗談混じりだろーけど。
「いっぱい得点しててすごかったよ。
凛々子ちゃんもカッコいいって何十回も言ってたし。」
「お世辞でいいからカッコいいって言えよなー」
この人は私に何を言わせたがってるんだ。
実際言ってしまったらそれはお世辞じゃなくなってしまうから、私にはそれを言う勇気はなかった。
「ちょっと練習付き合えよ。
送ってくからさ。」
「いらない。まだ明るい。」
外は少し暗くなってきていた。



