「恵麻」



やつは久々に、そして唐突に話しかけてきた。



「何?」



時間は放課後。

深雪が美術部の日だったので、ひとりで廊下を歩いていた。



葵の横には珍しく友人の男子もきゃっきゃと騒ぐ女子もいなかった。




「久しぶりじゃん。調子どーよ。」



調子どーよ。って何さそれ。


英語でいう『How are you?』的な?




「フツーだよ。そっちは相変わらずモテてるみたいじゃん。」



「まーね。」




否定しろよ……




「お前はやっぱ女子としか仲良くしてねーんだろ?」



「別に。隣の席の男子とかとはよく話すけど。」



「へー。成長したじゃん。」




全然感情がこもっていなくて、少しゾッとした。