「さ……なだ……」 熱を帯びる葵の瞳に捕らわれたように動けない。 「ハハッ…エロい顔。」 「は、はぁ!?」 このムードでそういうこと言う!? いや、ムードなんてなかったのかな。 私の思い込み? 「キスしたくなる顔すんな。」 「っ……」 「されたいって言うなら欲望のままするけど。」 「さ…されたいわけない!」 「わかってんよ。俺とキスするより死ぬ方がいいんだもんな、恵麻さまは。」 「それは……」 「谷本置いてきた。もどろーぜ。」 葵は何事もなかったかのように来た道を引き返し始めた。