「起立ー!礼‼︎」
「「ありがとうございました!さようなら!」」
ああ、うるさい。うるさいのは僕嫌いなのに。
「夏目ー」
不機嫌に教科書を鞄に詰め込みながら僕…、吉野夏目は振り返った。少し柔らかな目つきに不釣り合いの不機嫌そうな瞳。小さくそよぐ短髪。華奢な身体。男子にしては幼さと繊細さを感じさせる……夏目はそんな男子だった。
「なんだよ梓。僕、すぐ帰って寝たいんだが」
「どーせ一緒の寮室でしょ?なら一緒に部屋に戻ろうよ」
「僕はすぐ帰りたいんだ。お前と帰ってたらすぐ帰れない」
「大丈夫だーって。ね?」
と、僕と仲良くしようとしているこの男……琴吹梓。猫毛を際立たせるパーカーに、いつもオール微笑。かつお節介。正直、迷惑だ。僕はため息をついて、教室を出た。
「あ、ちょ、ちょっ、待って夏目!俺まだ教科書入れてないよー!!」
知るかバカ。