桜並木の下で

「より多くの感情を感じる事と表現する事が、私達が生かされている理由じゃないかな?」

「何のためにですか?」

「感情ってね、楽器の音を鳴らす感じに似てるの…でね、神様は私達という名の楽器の音色を使って、ものすごい交響曲を奏でるつもりなのよ!!」

一気に千夏が言い終えると、番人は深くうなずいて言った。

「なるほど…さぞ美しい交響曲になるでしょうね…番人の役割を与えられた私には、あずかり知らぬ事ですが…」

番人は青く澄み渡る空を見上げると、ヒラヒラと舞う花びらを見つめた。

「…今、ちょっと寂しいって思ったでしょ?番人さん」

千夏も番人と同じように、花びらが舞う空を見上げると言った。

「いえ、私にはそのような感情は…」

と言いかけて、番人は少し考えると言葉をつづけた。

「…あなたがそう言うのなら、きっとそうなのかも知れませんね…」

「うふふ…」

千夏は嬉しくなって、満面の笑を浮かべると番人に笑いかけた。

いつの間にか二匹の蝶が、二人の周りをヒラヒラ舞うと青い空へと消えて行った…


(終わり)