#7-1

「うわー、でっかいな...。」

目の前にそびえ立つは5階建の豪華旅館。
周りの広々とした日本邸の景色に、自分には少々敷居が高いのではないかと怖気付く。

「あの...、ここ本当にあの値段でよかったんですか?」

ひっそりとこの企画の発案者である学年主任に耳打ちをする。

「ああ。大丈夫だよ。ここ、今でいう訳あり特価てやつで安くなってるから。」

「訳あり?何がですか?」

「壁が薄いんだってさ。元が金持ちの別荘だったから?設計上、気にしなかったんだな。物音とかそーいうの結構隣に聞こえるらしい。」


...おいおい。それって、相当プライバシーに関わるよな。


まぁ、そんな訳で(?)教員旅行と称して俺たち三学年担当メンバーで温泉旅行に来たわけだ。


「...にしても、豪華だな。壁が薄いくらいで何であんなに安くなるんだろう...?」

俺がぼやくと、それに反応した小田先生が口が開いた。

「まぁ、大人の事情だよ。早乙女君〜。ここはまぁ、飽くまで泊まる場所な訳だからさぁ?」

.
「早乙女君...?」

俺の言葉に耳も傾けず、小田先生は声のトーンを落として静かに言った。


「夜な夜な“そーいう声”が漏れたら溜まったもんだじゃないよなぁ...。」

「.........、はぁ。」

ビミョーに納得した様子で俺は旅館に入った。

内装は思った通り和風でなにより煌びやかで豪華だった。
壁が薄いことを除いたら是非今度泊まりに来たいと思った。