初恋しました





「……あれ、あの子じゃないか?」




拓の指さす方向には……



「………うそだろ」



こちらに向かって歩いてきたのは、名前も知らない図書館の彼女。


俺の、初恋の人。


その人が俺と同じ高校の制服を着て歩いてくる。



落ちてくる桜の花びらを嬉しそうに眺めながら、坂を下り、俺たちのそばを通りすぎる。



「おい、よかったな志貴!
お前あの子と同じ学校じゃん!」


「あぁ……」



ヤバイ。ハッキリ言って現実味がない。


というか笑ってた。


というより微笑んでた?


あのときと同じ、優しい笑顔だった……



「志貴、これはチャンスだぞ?」


「…分かってる」



拓の言った通り、これはチャンス。


手に届かない距離にいたと思ってた子が、今は俺が手を伸ばせば届くところにいる。


俺が動けば、知ってもらえるまたとない機会だ。



「絶対に、捕まえる」



俺は過ぎ去った華奢な背中に向かって微笑みを浮かべた。







Fin.