一瞬触れるだけの、柔らかなキス。


目を閉じることも忘れて、わたしは志貴くんを見つめていた。



「もっかい、いい？」


「へっ？」



鼻先が触れるぐらい近くで視線が絡まって。


志貴くんの前髪が、ちょっとだけ額にかかっている。


伏せた目や、囁く声がどうしようもなく色っぽく感じて。


誘われるように、わたしが目を閉じた瞬間に、また唇が重なった。


触れあったところから、幸せが溢れて体中に満ちていく。




「七織……好きだ」


「うん…わたしも……」




わたしの、小さくて大きな初恋。


叶わないと決めつけて諦めていたけど、大好きな人が同じようにわたしのことを想っていてくれた。


その想いがあったから、わたしも自分の諦めた気持ちを伝える勇気を出すことができたの。




志貴くん、大好きです……








Fin.