ガッ。
「あ痛ぁ!」僕は命理に頭突きを食らわせる。「なんでだよぅー。良いじゃんかちゅーくらいー」
 よくない。他に人がいるし、なんか視線が多い。
 こっちを見てた人たちが一斉にそっぽを向く。あー、初日から最悪だ。
 溜息を鼻で吹く。視線を窓の外に向けると、足音が近づいてきた。
「あんた達、付き合ってるの?」
 ん…?
 声に振り向くと、金髪の女が仁王立ちで立っていた。
「初日からイチャコラかましてくれちゃって。目障りよ!」
 目を三角にして怒号を浴びせてくる。胸元の名札を見ると、木本優香(きのもとゆうか)と書いてある。
「いちゃいちゃしてるように見えたか、木本(きほん)さん」首をすくめて言う。
「木本(きのもと)よ! 誰がきほんよ、馬鹿みたいじゃないっ!」机をバンと叩きながら、食いつく木本。
「あんた、腹立つわ!」
 ああ、そうかい。
「ちょっとちょっとー、'あたしの'榊に何暴言吐いてるのよ!(小声)」
 僕と木本に横槍を入れる命理。しかし、声が小さい。
「煩いわよ、売女(ばいた)」目を細くして、命理を睨みつける木本。
 煩いのはどっちだ…。