無理矢理シンデレラ!!

……*時雨side*……………



「やりたいことやりゃぁいいんだよ。」


何でもないとでもいうような態度でそう言った女に目を奪われた。

裸足で噴水の上に立つという可笑しい行動さえも

誰にも、何にも縛られていない事を主張しているようだった。

簡単に言ってしまえば、一目惚れ。

馬鹿げていると自分でも思う。


「お前、名前は?」



欲しいと思ったものは全部手の中に入れるまで気がすまない俺がそのまま終われるハズもない。


「春瀬凛海。あんたは?」


「楠木時雨だ。」



さてまずは、凛海の言うようにこのパーティーをぶち壊そうか。俺なりの方法で、な?


驚くこいつを担ぎあげ、パーティー会場へと向かう。


おーろーせぇー、と抵抗する凛海を軽く無視して会場内を突っ切った。

………そろそろいい時間のはずだ。


「あっ!時雨様!!どちらにいらしたのですか!?会長が探しておいででしたよ!!?」

「知ってる。それよりマイクねぇか?」

「ま、マイクですか?それなら司会席の方にあると思いますが……というかそちら女性は一体………?」

「すぐにわかる。」

親父の秘書であろう七三分けの男の横を通り過ぎて司会席に向かうと、使われてないコードレスのマイクが椅子の上に置かれていた。

そいつの電源を入れ、凛海を俺の隣に下ろす。

すかさず逃げようとする凛海の腰を引き寄せ、バランスを崩した凛海が俺にもたれかかる。

「な、何する気なんだよぉー……」

「ちょっとお前その体制でいろ。」

マイクに入らないように凛海の耳元で小声で呟けば、顔を真っ赤にして凛海が固まる。

(耳弱ぇのか………)

ちょっとニヤ付きながらマイクの音をテストすると、中にいた奴らが全員こっちを見た。

「あーあー…………よし、大丈夫だな。

いいか、親父も会社の奴らも良く聞け!!




こいつが俺の選んだ嫁だ!異論は認めねぇ!」




会場内が一気に静寂に包まれ、マイクを切る音がやけに響いた。