何度も傷つけられ泣いて…
別れたいのに、尚人は別れを拒む。
気づけば、まる5年が経過した。

バレンタインに紗菜はタルトを2つ焼いた。
最高のできだった。

カスタードタルトには、プロミスリングをしのばせた。

クリームチーズタルトには、TDLのチケットをしのばせた。

紗菜は、60キロ離れた尚人に渡しに行く予定だった。
尚人は、取りに行くと…

タルトは、冷蔵庫で冷やしたかった。

尚人は、ホテルに紗菜を誘う。

紗菜 タルトは、どうするの?
尚人 外は寒いから車に置いておくほうがいいよ

翌朝、空は晴れ渡り日の光が溢れていた。

車に置いてあったタルトは無惨な状態になっていた。

目の前でダメになった2つのタルト…

紗菜の心はズタズタだった。

翌日から、紗菜はめまいで体を動かすことができなくなった。

心療内科で、心を病んでいることを告げられた。
めまいは、紗菜の体力を消耗していく。
紗菜の心や精神面はどんどん混濁していった。

ふたりの未来は語り合えない

変わるといって変われない尚人

二人に未来が訪れるとは思えない。

紗菜は別れることがお互いのしあわせになると感じている。
ひたすら別れを拒む尚人は一体何を考えているのか…
尚人の言葉の信用度は、今となっては無いに等しい。

紗菜は何度も尚人に聞く。

あなたはどうして自分を守ろうとするの?
あなたの心は私のところにはないよね?
あなたはなぜ愛していると言ってくれないの?
あなたは私に何を望んでいるの?
あなたに私が何かしたの?なぜ私は傷つくの?

尚人の答えは…

別に自分を守ろうとしてるわけじゃないよ
紗菜のことは大切に思ってるよ
愛していると言い慣れてないし恥ずかしいんだ
ずっと紗菜と一緒にいたい
別に傷つけようとしているわけじゃないよ

ふたりの思いは重なることはなかった。
紗菜はただ愛しているの言葉が欲しかった。
愛しているの言葉の中に、安心、未来、感情全てが含まれ紗菜にとって、今欲しい全部がつまっているのだ。

心を病んだ紗菜には、心を込めた言葉が必要だった。
尚人には、愛しているの言葉を言わせない何かがある。
紗菜は、尚人を信じることができなくなっている。

尚人は、なぜ愛していると紗菜に言えないのか…
なぜ、紗菜と別れようとしないのか…
なぜ、紗菜を傷つけてしまうのか…

紗菜が望むものは、尚人の中に無いのか…