その一言で慶太くんの顔つきはまた変わった。
「千春、落ちた時のこと考えた?」
低く冷たい声、すこし怖い。
今までに見せたことのない慶太くんの姿に驚いた。
そして、慶太くんに慶太くんの学校に行きたいと言って否定されたことにも驚いた。
何度も考えて出した答えだから…
『考えたよ。でも、私行きたい。』
私は私の思いをぶつけた。
思ってること全部じゃないけど、今伝えられることだけでも伝えたかった。
「行けたとしても後が大変だぞ?」
優しめの口調だが、やはり怒っているような感じがする。
それでも、どんなことを言われようと私は行きたかった。
私のずっと行きたかった高校だから。
だけど私の口から出たのは弱々しい言葉だった。
『でも………』
その言葉を打ち消すように慶太くんは言葉を発した。
「好きな人も無理されたら迷惑じゃない?」
私の目からは涙が出てしまった。
慶太くんに否定されたことが悔しくて、悲しくて。
高校のことも、私の気持ちも。
慶太くんの言葉は私の心に刺さった。
でも、私を冷めさせはしなかった。
逆に熱くしてくれた。
『私にだってできる。バカにしないで!』
大きな声でそう言い放ち、勢いよく家を飛び出し我が家に帰った。