「…熱がある。しかも結構高い。
それに…」

斗真兄ちゃんはそう言って俺の顔を覗き込み、ニヤリと笑う。

「…優奈、お前の名前呼んでたぞ?」

「…!?」

「よかったなぁ流可。
…手ェ出すなよ」

斗真兄ちゃんはそう言って俺の肩をポンと叩く。

俺の心臓はドッキドッキと鳴ったが、

それもすぐにおさまる。

「…手なんか…出せませんよ。だって優奈は…」

「あ?」

「…ああ、別に。
斗真兄ちゃんは今日は一限目からですか?」

「そうなんだよな。
あーあ…ダリ。じゃあま、頼んだ。
あ、休むって電話はしたからな」

斗真兄ちゃんはそう言うと、元から持っていたのか、

大学に行くときにいつも持っている鞄を持って俺の家から出て行った。