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10歳の春

彼女の音色は会場全体に響き渡り聴くものすべての心を癒やす、心の薬のようだとも言われている

「優勝確実ね!!」

彼女の母親もまたピアニストで、世界中を飛び回っている

「さすが私達の子供だ!」

彼女の父親は楽器関連の会社を経営している

まさに絵に描いたような幸せな生活を送っている彼女は孤独や不安とは無関係だった。

だからか、余計に彼女は孤独を強く感じた

母と父を事故で亡くしたことによるショックと共に。

丁度コンクールの帰り道だった、その事故が起きたのは___

ガッシャーン

窓ガラスの割れる音、燃え広がる炎

赤く色づいた視界、鼻に付く赤い赤い血の臭い

それはまさに地獄絵図だった。

「お母さん!!お父さん!!」

「渚、貴女だけでも生きて!!」

「渚は良い子だろ?最後の父さんと母さんのお願いも聞いてくれるな??」

「最後なんて言わないで!!」

「「生きてピアノを弾き続けなさい。」」

「嫌だ!!私独りになっちゃうよ!!」

少女がそう叫んだ時には二人の命は天へと足を運んでいた。

「嫌だ、私を置いて行かないで、独りぼっちにしないで!!!」

彼女の叫び声は虚しく空へと消えた。