「火焔くん、大丈夫かな?」


一人離れた場所で渡された手紙を読んでいる火焔を見て、花音は心配そうに呟く。

手紙に何が書かれているのかわからないが、火焔の顔色は冴えないままだった。


「それにしても、火の国に侵攻を始めたとなると、既に風の国は奴等の物になったってことか。あまりゆっくりしてはいられないかもな」


メイドが用意してくれた紅茶を飲みながら光輝が言う。


「うん。まだ宝珠も一つだけだし、急いだ方がいいよね」


視線を火焔に向けたまま返すと、読み終わったらしい火焔が掌に炎を宿し、手紙をその中へ入れてしまった。

炎に包まれ、手紙はあっという間に燃えてなくなる。

それを確認して息をついた火焔に風夜が近づいていくのがわかった。


「火焔、手紙は何て書いてあったんだ?」


手紙の内容を聞こうと風夜が声を掛ける。

だが、火焔は口を開こうとしない。


「おい!何て書いてあったか言えないのか!?」

「ちょっ、風夜!」


声を荒げた風夜を慌てて止める。

火の国へ侵攻を始めたということは風の国は完全に陰の一族の手におちたということで、風夜も少し冷静さを失っているようだった。

それでも口を開こうとしない火焔に風夜が舌打ちする。

彼はそのまま部屋を出ていってしまい、花音は火焔を見た。


「火焔くん」

「・・・悪い。少し考えたいことがあるんだ。一人にしてくれ」


そう言って、火焔も出ていき、入れ替わるように夜天が入ってきた。