『ねーさま!』


一人の幼い少年が小さな花束を持って駆け寄ってくる。


『こーきが作ったの。ねーさまにあげる』

『ありがとう』


嬉しそうに返す自分。

それにますます笑顔になる幼い光輝。

幼い姉弟は幸せそうに笑っていた。


景色が変わり、何処かの建物の中で花音は本を読んでいた。

そこに先程より成長した光輝が駆け寄ってくる。


『姉さま、見てみて。僕ね、力が使えるようになったんだよ』


嬉しそうに笑う光輝が、掌に小さな光球を作り出す。


『えー、私はまだなのに。光輝に先越されちゃったね』

『姉さま、姉さまは僕が守ってあげるから、大丈夫だよ』

『そう?頼りにしてるね』

『うん!』


そこでまた場面が変わった。

『姉さま!父様!母様!離せ、離せー!』


兵達に囲まれるようにして、光輝が
何処かに連れていかれる。


『光輝、光輝ー!』


こちらに伸ばされる手に花音も手を伸ばしたが、それは届かない。


『お父様、お母様!光輝が!』

『・・・ごめんなさい。花音』


謝罪と共に額に手を当てられ、何かが封じられていく。

更にその周りを光が包み、身体が引っ張られるような感覚のあと、気が付くと一つの家の前にいた。


『此処が、新しい家だ』


父の声を聞きながら、花音は自分の後を振り返る。

そこには、誰もいない。

花音は〈一人っ子〉で、両親と〈三人暮らし〉なのだから、当たり前の筈なのに違和感がある。

少し前までそこには誰かがいたような気がした。