顔を俯かせたまま、両親は答えない。

それに溜め息をついて、口を開いたのは王だった。


「光輝は、お前の弟だ」

「風真!」


父が咎めるような声を上げた。


ー『ねーさま!』ー


記憶の何処かで、幼い少年が笑顔で呼ぶ。


「っ!」

「花音!!」


踵を返し、謁見の間を飛び出す。
後から空夜の声がしたが、構わず走った。

頭が痛い。

何が何だかわからない。

後から追い掛けてくる足音から逃げるように走っていると、ある扉から風夜達が出てくるのが見えた。

「風夜!捕まえろ!」


風夜達の横を抜けようとした時、空夜の声がした。

その声に反応した風夜に腕を掴まれる。


「いや、放して!」

「おい、どうしたんだよ!?」


風夜に掴まれた腕を振り払おうと暴れるが、逆に抑え込もうと力をこめられる。

その時、花音の耳に誰かの溜め息が聞こえた。


「ごめん」


火焔の小さな謝罪が聞こえ、首筋に衝撃がはしる。

手刀を入れられたのだと思った時には、身体から力が抜けていた。