「…あっ!やっほー!翔ちゃん

おはよっ…」







甘のおはようの4文字を遮り、







甘がこちらに近づくのを拒絶する。







「こっちに来ないで。

アンタの甘ったるい香り、こっちにまで香るでしょ」







「えぇ、甘ったるい香りって…

酷いなぁ翔ちゃん

…ってゆーか、そんなに香りする〜…?」







困ったように眉を八の字に曲げる甘。







「…アンタ、鼻おかしいんじゃないの?

毎日毎日チョコレートみたいな香りさせて…

何食べたらそうなるワケ?」







ジッと睨んでやった。







「ん〜…食べ物関係あるかなぁ?」







「言葉のあやでしょうが。

これだからアンタは…」







「そんなに怒らないでよ。

お肌に悪いよ?」







「アンタが私に近付かなければ

怒ることも無いけどね」







甘が一歩、こちらに近づけば







当たり前のように一歩、甘から遠ざかる私。







毎日のやり取り。







「いつもいつも飽きないよね。

花牧も、翔も」







──"香崎 柚子"(かざき ゆず)。







私、──"高松 翔"(たかまつ しょう)の親友です。







「何言ってんの、飽き飽きだよ。

…っておい、こっちに来ないでってば」







「もう、良いじゃんっ。

翔ちゃんったらケチだなぁ」







「良くないから言ってるんでしょ」







ぷくりと頬を膨らませて、じぃっとこちらを見てくる。







私みたいな女じゃなければ、きっとイチコロなんだろう。







…が、







私は何にも感じない。







「…柚子、教室行こう。予鈴なっちゃう」







「はいはーい」







「ちょっ待っ…

あぁっ。待ってよ、僕も行くっ」







早めに歩を進める私らに追いつこうと、







パタパタと軽い駆け足で私らに向かう甘。







…徐々に近づいて来てる。







アイツの甘ったるい香りが香ってきた。







……あぁもう、鬱陶しい。