あ、一個だけ嘘ついた。 『懐かしく思い出される』なんて思ってないよ。 自分が書いた手紙の封筒から、もう一枚、便箋とは呼べない紙切れを取り出す。 イギリスにとんだあと、友人たちから届いた手紙のなかに入っていた紙。 名前も書いていないそれに、目を奪われた。 『待ってる』 自分のよく知っている、真っ直ぐな彼らしい、実直な字体。 今眺めてもいとおしい。